今回はスポーツ現場で比較的多く見られる「肉離れ」についてのお話です。
肉離れとは羽状筋が遠心性収縮により筋腱移行部を中心に損傷していく疾患。
直接的な外力ではなく、自らの筋力の介達外力によって筋肉が過伸展されて発症します。
目次
肉離れが多い部位
- 1位 ハムストリングス(特に大腿二頭筋長頭)
- 2位 下腿三頭筋
- 3位 大腿四頭筋
私自身もハムストリングスの肉離れが最もみる機会が多いです。
受傷機転としてはダッシュ中、足の接地前後に起こりやすい。
肉離れの重症度
- 1型 出血所見だけがある出血型
- 2型 筋腱移行部損傷型
- 3型 筋腱断裂型(歩行は不可能なことが多く、患部が陥没します)
※復帰の目安としては1型が1~2週、2型では1~3ヶ月、3型では数ヶ月を要する
3型の場合には手術療法を選択することもあります。
ハムストリングスの肉離れの臨床的評価
- 腹臥位で膝関節屈曲位から膝関節伸展が可能かどうか評価。この時点で3型の損傷では膝を伸展できない
- 膝の伸展が可能であれば背臥位でSLRを他動的に実施。軽症であれば健側との差が少ない
つまりどこの肉離れでも評価の方法は同じ。
肉離れした筋肉を短縮位から伸張位に変化させて疼痛を確認すればOK。
肉離れに対する様々な意見
- 肉離れの発生 には膝関節屈筋群のエキセントリックな筋力と股関 節伸展筋群のコンセントリックな筋力が関連している
- ハムストリングス肉離れの発生は神経・筋系トレーニングの実施により発 生を減少することができる
- 肉離れをする選手の走り方はハムストリングスが過剰に伸びるようなストライドの大きい走り方をする
- ハムストリングスの柔軟性低下が原因
- ハムストリングスの筋持久力の低下が原因
- ハムストリングスと大腿四頭筋のアンバランスが原因
などが報告されています。
いづれも前提条件が異なるので何とも言えないのが現状。
何が正しい・間違いよりも1人1人の個別のアライメント、筋力、柔軟性、動作を評価するのが望ましい。
肉離れが起きた時の対処方法
急性期に起きた場合はRICE処置です。
- 安静
- 冷却
- 圧迫
- 挙上
また肉離れをした筋肉を伸ばすことは禁忌です。
痛みや脹れが引いてストレッチ痛が改善してきたらテーピングやストレッチを併用して競技復帰を進めていきます。
このように肉離れに関してはMRIとストレッチ痛を確認しながらスポーツ復帰を目指していきます。
肉離れ後のリハビリテーション
- 痛み(圧痛、伸長痛、短縮痛)がないことがリハビリを始める前提条件
- 痛みがない範囲で徐々にハムストリングスを伸ばしていく
- 痛みのない範囲で筋肉を収縮させていく
- 筋力・柔軟性共に回復していれば徐々に競技復帰していく(まずはジョギングから)
大まかにはこの流れです。
加えてMRIによって腱膜の連続性を確認しながら医師の判断の元進めるとより良いでしょう。
競技復帰をするためには
- 圧痛、伸張痛、短縮痛がない
- 徒手抵抗に対してMMT5発揮できる
- ジョギング、ダッシュ、ストップ、ジャンプ、切り替えしが違和感なく行える
を最低ラインにしておきましょう。