ぼくは臨床で必ず「ピラティス」のメソッドを入れるようにしている。
その理由は単純。
「運動療法が学習の武器になり、怪我や慢性痛の再発予防になるから」
徒手療法は専門家の「手」が必要になる。
でも運動療法は一度習得すれば自分1人でもできる。
日本の運動療法は遅れている
病院でのリハビリの光景に違和感がある。
「なぜずっと寝たままマッサージされているのか?」
1時間のリハビリの内、運動療法で動いている時間の方が圧倒的に少ない。ここにいつも疑問があった。
状態によっては背臥位で徒手療法を受ける必要もあるかもしれない。
でも・・
圧倒的に動いている時間が少ない。
これはどの病院やクリニックに行ってもそう感じてしまう。
海外ではマニュアルセラピストと運動療法専門のセラピストがうまく手を取り合ってサイクルしている。
クリニックにはピラティスの道具リフォーマーが1台ある。
つまり運動分野においては日本は海外に遅れを取っている。
日本はマニュアルセラピストが多い印象。「セラピストの手で治す」ことに酔う人が多い。
正直ぼくはここに1mmも興味がない。
もしその「手」がなくなったら患者やクライアントさんはどうするのだろうか?
「セラピストの手で治す」よりも「患者やクライアント自身でセルフコントロールできる」方が経済的にも時間的にも有効じゃないだろうか?
だからぼくは運動療法にこだわる。
慢性疼痛サイクルから運動療法を考える
神経学的骨格筋慢性疼痛サイクルというものがある。
- 疼痛、炎症
- 筋アンバランス
- 運動パターンの変化
- 間違った運動プログラムの学習
- 関節にかかる力の変化
- 関節の変形、姿勢の変化
これらのサイクルが慢性的な疼痛を引き起こすというもの。
つまりセラピストとしてはどこかでこのサイクルを遮断する必要がある。
多くの人は「痛み」にフォーカスして「痛み」を変化させることに着目してしまう。
確かにそれも重要。痛みの遮断自体は良いサイクル生む。
しかしそれだけでは慢性的な痛みを誘発した根本の原因が変わらない。
だから再発する。
その原因が「姿勢」や「動き」。正しく学習することが求められる。
人間は生まれた時から自分の体の扱い方を学んだことがないから。
脊柱に必要なのは「柔軟性」と「固定性」を変える
体幹トレーニングが流行したため体幹=固めるという印象が強いが・・
脊柱にはどちらの機能も必要になる。
脇元先生のSpine Dynamicsでもこのように説明されている。
脊柱機能の特徴は作用力の起点作用(固定性、Stability)と反作用力の緩衝(柔軟性、Flexability)という相反する機能を持ち得ており、運動時には相反する機能が同期する(→Buffering Function:脊柱の作用力発揮の固定性(支持性)機能と反作用力緩衝の柔軟性機能が同時に機能すること)。
つまり脊柱は柔らかくすることもできて、一瞬で固めることもできる能力が必要なわけです。
ピラティスでは常に体幹を長軸方向に延長し、体幹をドローイン、骨盤ニューテーションさせて脊柱全体で動くエクササイズをします。
この運動が脊柱に柔軟性と固定性をもたらしてくれるのです。
前段階として姿勢の評価が必要になります。
体幹評価・運動に必要な2つのチェックポイント
文面だけではあまり理解できないかもしれないが、なるべくわかりやすく。
体幹の柔軟性と固定性を改善するためには
- 体幹のエロンゲーション(長軸方向の伸び)
- 脊柱全体をつかう(頚椎〜胸椎〜腰椎を満遍なく)
これが必要。
1体幹のエロンゲーション
端的に「体幹を伸ばしながら使う」こと。
特に体幹の側屈や屈曲、回旋の場合は体幹を潰しながら動く人が非常に多い。
体幹が潰れる→腰椎が潰れて、胸椎の可動性が低くなっているパターンです。
改善するためには体幹を伸ばしながら使うこと。そしてコアを効かせて動くこと。
すると動きすぎていた腰椎の動きが少なくなり、胸椎が動くようになります。
2脊柱全体を使う
1を実践すると2に繋がります。
脊柱全体を使うこと。
これも人間の特徴を大まかにまとめると
「腰椎が動きすぎて、胸椎が動かない、頚椎がカウンターで変位している」
パターンが多いです。
だから腰椎をインナーマッスルで固めて胸椎を意識して、頚椎のヘッドフォワードを修正して動く。。
これがピラティスを利用してできるのです。
ピラティスってどんな動き?動画で説明
これはロールアップというエクササイズ。
効果は
- 脊柱の柔軟性向上
- 腸腰筋、腹筋の筋力強化
- 脊柱の運動学習
- back lineのリリース
といった感じです。
体幹をエロンゲーションして脊柱全体を使うことがとても重要!
理学療法士であれば発展させて運動連鎖や抵抗をかけることでさらに効果を引き出せる。
そんでもって1つのエクササイズで複数の効果を引き出せることがメリットでもある。
ピラティスのまとめ
- 運動療法に相性が良いピラティス
- 理学療法士が応用しやすい
- 疼痛サイクルを遮断するためには運動パターンの変化が必要
- 脊柱には柔軟性と固定性が必要
- 体幹の長軸方向に、脊柱全体を使うように工夫する