サッカー指導者の方々と理学療法士の先生との情報交流会でした。恐縮ながら足関節捻挫についてのお話をさせていただきました。
以下その内容です。
スポーツ現場でもし足関節捻挫が起きたら?
あなたはどのような対応をとるのか?
サッカー指導者の方々で情報をシェアして選手の怪我が減り全力でプレーできることを願います。
1足関節捻挫とは?
足関節捻挫はスポーツ障害で最も発生する確率が高い疾患です。
あるスポーツチームの1年間の障害発生率では足関節捻挫は50%を占めています。
基本的には足関節捻挫は以下のような靭帯が損傷をします。
外側の靭帯
・前距腓靭帯
・踵腓靭帯
・後距腓靭帯
・二分靭帯
内側の靭帯
・三角靭帯
・バネ靭帯
その他
・遠位脛腓靭帯
一番多いのは外側の靭帯損傷です。これは足関節の形の形状の問題もあります。また一般的には遠位脛腓靭帯損傷があると靭帯損傷度としては重症になりますので、圧痛を確認すると良いでしょう。
ではこれらの靭帯を損傷した時にはどんな判断や対処が必要になるでしょうか?その選手が試合に出て良いかの判断はどうすれば良いのでしょうか?
2スポーツ現場での判断 骨折か?捻挫か?
まずは骨折か捻挫かの判断が重要になります。私が習った評価方法で最もスピードが速く正確な判断を下せるツールをご紹介しました。それがBuffalo ruleとSALTAPSです。私は加えて圧痛の評価から重症度を分類します。
Buffalo rule
1内、外くるぶしの上方6cm程度を触診。
2舟状骨(内くるぶしの下の出っ張った骨)
3第5中足骨基部(小指の下辺りにある出っ張った骨)
これら4点を押して強烈な痛みがなければ骨折の可能性は低くなります。
加えて4歩以上自力で歩くことができればほとんど問題ありません。
SALTAPS
イングランドのフットボール協会でも使用されている方法です。方法はとても簡単。
See:怪我した選手を見る
Ask:問診。いつ、どこで、どこが、どんな風になどなど
Look:患部を見る。素人でもわかる明らかな変形や腫脹には注意
Touch:患部を触って、熱感や腫脹、変形を確認。専門家であれば圧痛部位を各靭帯を触りテーピングの構成を考えておく。もちろんここでBuffalo ruleを使用して骨折かどうかの判断もしておく。
Active ROM:足関節の自動運動を確認。全方向。
Passive ROM:足関節の他動運動を確認。全方向。
Strength:足関節の運動に抵抗をかける。全く力が出ない場合は注意
SALTAPSのテストを問題なくクリアすればその場で現場で戻しても大丈夫でしょう。もし問題がある場合はより詳しく整形外科テストや触診を細かくして病態を捉えていくことが大切です。
3RICE処置の色々
今では一般的となったRICE処置。
一般的なRICE処置の方法をお伝えします。
Rest:安静。無理をして運動してしまうと炎症が長引きます。軽い捻挫だからこそ大事な時以外はrestが大切です。
Icing:冷却。時間としては20-30分程度。その後は1時間程度あけてから再度冷却。これを反対側と同じくらいの表面温度になるくらいまで続けます。72時間続けると大体OKです。しかしこのアイシングは賛否があります。冷やすことで
・筋肉が固くなってしまう
・腱の修復スピードを遅らせてしまう
・神経の動きが低下してしまう
加えて1時間アイシングをすると上記のような効果が出るといった文献もあります。炎症自体は体にとって必要な生理的な反応なのであまりにも抑制が強すぎると逆効果になることがあるので注意して進めましょう。
Compression:圧迫。内出血を抑える効果があります。主にバンテージや弾性包帯が使用されます。注意点は圧迫しすぎて血流障害をおこさないことです。圧迫した時は20分くらい毎に爪の色や患部を確認しましょう。
Elevation:挙上。心臓よりも高い位置に患部を挙上させておくことで内出血を抑えます。
日本では基本的にRICE処置が推奨されていますがヨーロッパではあまり積極的ではありません。選手を評価して必要であれば RICE 処置を行うことがスタンダードですね。
今後もRICE処置の方法や賛否は変わるとおもいます。
10年後20年後にはまた新しい方法が開発されているかもしれないので、常に最新の情報をとらえておきましょう。
4足関節捻挫後の足関節はどうなるの?
応急処置は大丈夫。
でもその後の足関節はどうなるか?
機能的な問題が確実に残ります。
可動域制限や筋力低下から痛みが残り、パフォーマンスが低下する。
ということが良くあります。
早期から足関節の機能回復をしっかりと行いましょう。
→詳しい足関節の機能についての記事はこちら
足関節捻挫のオススメの書籍
こちらも科学的な基礎が書いてある書籍です。