「ローテータカフ(回旋筋腱板)を鍛えるぞ!!」と僕が張り切って19歳くらいの時に一生懸命やっていました(^ ^)
「筋トレをする時に肩を痛めないようにローテーターカフを鍛えればいいんだ。。」とスポーツ雑誌を鵜呑みにして。
その結果肩を痛めるという結末w
「あれ?ちゃんとインナーマッスルを鍛えていたはずなのに?なぜ?」と疑問を持ち専門家になった今。僕が意味のないローテーターカフトレーニングをしていたことに気づきました。
適切に肩を整えることで意味のあるローテータカフトレーニングに繋がります。
今回は肩関節のローテーターカフの理学療法評価と機能解剖に加えて、その意義をお伝えします。
ローテーターカフトレーニングの機能解剖
棘上筋
<棘上筋の特徴>
- (起始)肩甲骨の棘上窩に付着。(停止)上腕骨の大結節、肩関節包に付着
- 挙上30度で働き、90度でピークを迎え、その後は遠心性収縮をする
- 新しい解剖の初見で棘下筋が大結節前方まで付着している
- 肩甲挙筋と連結がある
- 三角筋と共同して肩関節のフォースカップルを形成
肩峰下インピンジメントにも重要な筋肉。臨床上ではこの部分と脂肪組織や肩峰下周囲の軟部組織と癒着して動きにくくなると大変。痛みも伴いやすいので注意。この部分と肩甲挙筋が硬くなり、「肩こり」を起こしている症例をたくさん経験します。
棘下筋
<棘下筋の特徴>
- (起始)肩甲骨の棘下窩に付着。(停止)上腕骨の大結節に付着。
- 上方の横走繊維と下方の斜走繊維に分かれる
- 腱性部分は屈曲90度・外旋位から水平外転で作用。下方の筋性部は外転90度での外旋に作用。
- 90度までは棘上筋・90度以降は棘下筋でスイッチする
- 小円筋と棘下筋の部分にある後方関節包は厚い
この部分は萎縮が触診でもわかりやすい。一方棘上筋は僧帽筋もあるため萎縮は分かりづらい。評価は横走繊維と斜走繊維に分けて行うことが大切!
小円筋
<小円筋の特徴>
- (起始)肩甲骨の外側後面の下角に付着。肩甲下筋筋膜に付着。(停止)上腕骨大結節と肩関節包に付着。
- 小円筋は3rdポジションでの肩関節内旋作用
- 後方関節包の挟み込みを防止
- 小円筋のスパズムは中枢より抹消の影響が大きい
- 筋膜としては菱形筋〜棘下筋〜小円筋と連結
- 小円筋は遠心性収縮をかけながら挙上をコントロール
- 小円筋の腱性部分は90度屈曲内旋からの外旋に作用、下部の筋性部分は下垂最大内旋から外旋に作用
非常にスパズムを起こしやすい筋肉。また棘上筋と同様に遠心性収縮をして挙上をコントロールするため小円筋の伸び縮みは重要なポイント。棘下筋と小円筋は肩関節のポジションによって触診を変えます。
1st/2nd.3rdポジションについてはしっかり学んでおきましょ。
ちなみに小円筋と棘下筋は棘下筋筋膜というもので密接に連結する。
肩甲下筋
<肩甲下筋の特徴>
- (起始)肩甲骨の肩甲下窩に付着。(停止)肩甲骨の小結節に付着。
- 大切なのは最下部の第5束。(上部は小結節の上、中部は小結節、下部は下方関節包に付着)上部は挙上初期、中部は軽度外転位での内旋、下部は挙上位での内転内旋
- これが硬いと120度が限界(SHA)切除すると挙上が変わる
- 肩甲下筋下部繊維は下方の関節包に付着しているので、肩関節外転・外旋にて内転の等尺性収縮
- 上腕骨外転・外旋位に下関節上腕靭帯と合わせて前方の安定性を得ている
- インナーマッスル唯一の内旋筋
肩には
・三角筋筋膜
・腋窩筋膜
・棘上筋筋膜
・棘下筋筋膜
・肩甲下筋筋膜などがある。これらの膜の連続性を排除した状態がいわゆる「キレイな肩関節の解剖の図」になる。
筋肉の上、筋膜や皮膚や脂肪・関節包があることを3Dで理解することが大切。
— 吉田直紀〜理学療法士〜 (@kibou7777) 2018年3月12日
肩関節のフォースカップルの理解
肩関節には2つのフォースカップルがある。
- Coronal force couple:三角筋と棘上筋
- Transverse force couple:肩甲下筋と小円筋・棘上下筋
これらの筋肉同士が不安定な肩関節を安定させているのです。つまりどこかに不均衡が起きればその分だけ肩関節にはストレスが加わります。(骨頭の動き方・臼蓋上腕リズムの理解も大切)
ローテーターカフトレーニングの注意点
おそらく昔の僕のローテーターカフトレーニングの効果がなかったのはこれを無視したせい。ただ単に肩関節の内旋が外旋運動をしていてもダメだったわけです・・
特に姿勢と肩甲骨の位置を無視した状態でのトレーニングではうまくローテーターカフが働かないということです。
よくあるのが
- 三角筋のタイトネスがある状態での棘上筋トレーニング
- 肩甲骨前傾位でのローテーターカフトレーニング
- 脊柱後弯位でのローテーターカフトレーニング
- 肩甲骨が動いている状態でのトレーニング
などなど。一見正しく形はできているように見えて、効果がない。。これがローテーターカフトレーニングの難しいところ。
ローテーターカフの筋力評価
専門家であればローテーターカフの評価をしましょう。ポイントは3つ
- 低負荷での筋肉の反応、代償を評価
- 筋力発揮の条件を筋肉を短縮位と伸長位で評価
- 肩甲骨固定で出力が出るかどうか評価
まずローテーターカフ自体強い出力はないインナーマッスルです。だから負荷はもちろん軽めに
。力が出るかどうかも大切ですが、肩甲骨や体幹の代償を見抜くことも大切。加えて肩関節の整形外科テストもしっかりできるようにしておきましょね。
また筋肉の短縮位と伸長位で評価することも大切。なぜなら↓↓
つまり短縮位の方が筋肉の力が出にくく、肩関節にとっては重要であるから。
最後に肩甲骨の固定と非固定の2条件で評価すること。これは本当にインナーマッスルの筋力低下なのか?アウターマッスルが弱くてインナーマッスルの出力低下を起こしているかを判断するため。
- 肩甲骨固定で出力UP→肩甲骨を固定すれば力が出る→肩甲骨を固定するアウターマッスルの強化を示唆
- 肩甲骨固定で出力変わらず→肩甲骨を固定しても変わらない→単純なインナーマッスルの弱化
です。でも僕の臨床経験では圧倒的にアウターマッスルの弱化やマルアライメントがインナーマッスルの出力低下に影響を及ぼしていると考えています。
ローテーターカフトレーニングの重要性(滑走性低下)
「インナーマッスルの筋力低下を鍛えるぞ!」という表現よりも僕個人としては「周囲組織との滑走性低下を防止する・剥がす」というイメージの方が強いです。
それぞれの滑液包とインナーマッスルの位置関係を考えてもらうとわかると思います。
ローテータカフトレーニングを効果的に行う5つのポイント(動画)
- 脊柱の位置関係(屈曲位→伸展位保持で行う)
- 肩甲骨の固定をして行う
- 上腕骨の位置関係(上腕骨後方組織を柔らかくしておく)
- トレーニング条件を変える(繊維方向を分けて行う)
- 筋肉を短縮位と伸長位でトレーニング
ローテータカフトレーニング動画
実際のローテータカフトレーニングの方法です。
棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋を全て刺激しているトレーニングです。
回数は50〜100回くらい行いましょう。
ローテーターカフについてのまとめ
- 各ローテーターカフの機能解剖は必須で覚える
- どんな機能があるのか1つ1つ確認する
- 筋力評価をするときは短縮・伸長、肩甲骨固定・非固定の条件を変えて行う
- アウターマッスルの硬さや筋力低下も重要な評価項目
- ローテーターカフと滑液包の位置関係を理解
以上がローテーターカフのまとめです。
あくまでローテーターカフは肩関節の一部の要素にしか過ぎません。
ローテータカフ周囲の軟部組織が癒着しているとこれだけでうまく機能しません。。
細かい内容は肩を1冊にまとめたThe 肩関節 noteをみてね!