膝関節のリハビリテーションを行う際に必要な知識の1つ
「膝蓋骨のバイオメカニクス」
膝蓋骨骨折だけでなく、ACL損傷術後、大腿骨骨折、脛骨骨折にも影響を与える膝蓋骨の動き。
この動きが痛みの原因になっていることもしばしば。
膝蓋骨はどのように動き、動きが制限されるとどうなってしまうのか?
あまり教科書では深く追求されていない部分であるので必見( ´ ▽ ` )
膝蓋骨って屈曲・伸展時にどうやって動くの?
臨床で大切なのは正常な膝蓋骨の動きの理解。屈曲・伸展時にどうやって動くのか?
そしてどの部位が接触してどこに圧が加わるかの理解が大切。
- 屈曲で遠位へ移動、伸展で近位へ移動
- ちなみに膝伸展位の時は大腿骨と接触せず、もっとも可動性が良い状態
- 屈曲初動から内方へ移動
- 90度屈曲時に大腿骨と最大接触となる
- 屈曲角度が増すと接触する部位は膝蓋骨の近位へ移動。
- 屈曲角度が135度に達するとオッド面という膝蓋骨内面と外側面だけになる
まずはこの辺りのバイオメカニクスをとらえておこう。
膝蓋骨の運動パターン
膝蓋骨の動きには
- Frontal rotation
- Coronary rotation
- Glide
- Tilt
の4つ。大切なことはどの方向にも制限がないことが望ましい膝蓋骨の状態^ ^
A上下運動
膝蓋骨は膝の屈伸時に上下に動く。膝蓋骨の上には膝蓋上嚢、下には膝蓋下脂肪帯が存在しこれらの軟部組織は膝蓋骨の移動を妨げる因子になりやすい。一度癒着すると非常に可動域の回復に時間がかかる。なるべく早期から膝蓋上嚢をほぐすことが大切です。
B回旋
・coronary-rotation(水平面上での回旋)→膝屈曲115°までに平均11°内旋。内側や外側の膝蓋大腿靭帯が固くなってしまうとこの回旋が制限されやすくなります。
・frontal-rotation(前額面上での回旋)→膝屈曲130°までに平均7°外旋。
これらの回旋は外側広筋や外側の靭帯の癒着などによって制限されやすい。
簡単にまとめる!膝蓋骨運動の制限因子
- 上方向:膝蓋骨上嚢、大腿四頭筋、膝蓋支帯
- 下方向:膝蓋下脂肪体、膝蓋靭帯、膝蓋支帯
- 回旋方向:内側・外側膝蓋支帯、内・外大腿脛骨、膝蓋靭帯
もちろんこれ以外にも膝蓋骨を制限する要素がありますが、この辺りをしっかりとほぐすことで膝蓋骨の動きを改善することができます。→膝蓋骨以外の膝関節の要素はこちらから
膝蓋骨が動かないとどうなるか?
膝蓋骨が動かないということは膝蓋骨の運動が正常に行われないということ。
これをトラッキングエラーと呼び、異常な方向に膝蓋骨が動いてしまうことになります。
多くの場合膝蓋骨の異常な動きは
- 脱臼感
- 膝前面痛
- 違和感
- コキコキ音がする…などの症状を訴えます。
これらから逸脱し膝蓋骨もしくは大腿骨側にストレスを加える動きになってしまうので要注意。
膝蓋骨の低位・高位の問題
膝蓋骨が低位の場合は
- 膝蓋下脂肪体の癒着
- 膝蓋腱の癒着
- PF jointの圧が高くなる
といった状態が多い。
一方膝蓋骨が高位になると
- 屈曲初期で引っ掛かりが生じる
- PF jointの圧が減少
- 膝蓋骨の後傾が強くなる
- 大腿四頭筋が硬い
という状態。
膝蓋骨の低位・高位の評価はレントゲン上で行う場合もあるが、臨床的には膝屈曲位で評価することが多い。
膝蓋骨の動きの評価(動画で解説)
膝蓋骨の運動パターンを理解しどの部分の運動が阻害されているかを評価しましょう。
- 上下左右の組織を触診し膝関節の屈伸時の軌道を確認
- 組織の層のどこが問題かを評価。皮膚・筋膜・筋繊維・軟部組織など
- 膝蓋骨だけでなく、大腿骨・脛骨の動きも含めて評価
膝蓋骨のモビライゼーションと筋収縮
膝蓋骨のモビライゼーションは全方向にしっかりと動かしてあげましょう。
臨床でよく見かけるのは膝蓋骨のモビライゼーションが弱い人
しっかりと動かしても膝蓋骨が外れることがありませんので適切な力で行いましょ(脱臼歴がある人は注意!!)しかし他動的なモビライゼーションだけでは不十分です。
外側広筋や内側広筋をしっかりと働かせて筋収縮を促すことでさらに膝蓋骨の動きが改善します。(これは内側や外側の支帯自体にもストレッチがかかるからです)さらに中間広筋の収縮を入れることで膝蓋上嚢の癒着を剥がすことにもつながります。
しっかりと大腿四頭筋を働かせることで膝蓋骨の動きを改善していきましょう!
膝蓋骨の動きのまとめ
- 膝蓋骨の正常な運動を理解する
- 3次元で膝蓋骨の動きを捉える
- 正常から逸脱した動きを評価する
- 膝蓋骨の丁寧なモビライゼーションを行う
さらに深くPF jt・FTjtについても知りたい人はThe 膝関節noteオススメ!