理学療法とピラティスを掛け合わせるとどんなことができるのか?
- 3つの姿勢分類と筋バランスの評価
- 弱化しやすい筋肉と短縮しやすい筋肉
- 効果が出る運動療法の定義とは
- 運動強度の変更とキューイング誘導
正しく姿勢を分析し、筋バランスを詳細に評価、適切な運動療法が処方。これがしっかりできれば本当に便利です。
運動療法でしっかりと効果を引き出すことができます。
かつ持続して、セルフトレーニングで自分の体をメンテナンスできるようになります。
私が「自分の体は自力で変える」にこだわるのは持続性、即効性、継続性があるからです。
理学療法士の分析・評価の力を使いピラティスの運動療法を適切に負荷を合わせて行うとどうなるか??
3つの姿勢分類から考える筋バランス
人間の不良姿勢をわかりやすく3つに分類します。
あくまでも大まかに。短縮しやすい・弱化しやすい筋肉はありますが、人によって細かく異なります。これは一つ一つ評価していく必要があります。
Kyphosis-lordosis
頚椎と腰椎が過剰に前弯、胸椎が後弯姿勢。骨盤後傾、膝はやや過伸展。いわゆる反り越しに見える人。弯曲部分に過剰にストレスが加わる姿勢です。
現代ではこの姿勢の人はほとんど見かけません。なぜなら骨盤前傾になりにくい時代背景だからです。姿勢の良いヨガインストラクターの方やモデルに人が多いかもしれません。
- 弱化しやすい筋肉:僧帽筋下部、菱形筋、腹筋、大臀筋、ハムストリングス
- 短縮しやすい筋肉:大胸筋、脊柱起立筋、腸腰筋
Flat-back
頭部はややヘッドフォワード、脊柱がフラット、骨盤後傾の姿勢。
- 弱化しやすい筋肉:腸腰筋、脊柱起立筋、僧帽筋下部
- 短縮しやすい筋肉:腹筋、大胸筋、ハムストリグス、大臀筋
Swayback
頭部はヘッドフォワード、胸椎後弯、骨盤は様々なタイプあり。
(中間〜後傾が多い)いわゆる猫背です。これは現代人に多い。スマホやパソコン作業で頭を下方向に向いてしまう人がほとんどだからです。
- 弱化しやすい筋肉:僧帽筋下部、腹筋群、腸腰筋、脊柱起立筋
- 短縮しやすい筋肉:大胸筋、腹筋、ハムストリグス、脊柱起立筋
ヘッドフォワードポスチャーの筋バランスと特徴
現代人の頸部はほとんどがヘッドフォワードポスチャーです。時代背景の原因が大きいですね。
- 「座る」という時間が長くなった
- スマホとパソコンの使用時間が長くなった
これが問題です。
ではヘッドフォワードポスチャーの筋肉バランスと特徴について考えてみましょう。
ヘッドフォワードポスチャーの特徴
- 上位頚椎伸展位(C1-2)(後頭下筋群の短縮)
- 下位頚椎屈曲位
- 胸椎後弯位
- 肩峰よりも前方に耳がある
- 肩甲骨外転位
- 骨盤が後傾しやすい
- 口呼吸になりやすく、乳様突起周辺の筋肉が固い
という特徴があります
ヘッドフォワードポスチャーの筋バランスを評価するためには大きく3つのブロックの評価をする必要があります。
1頚椎前面・顎周り
- 舌骨上筋群(オトガイ舌骨筋、顎舌骨筋、顎二腹筋、茎突舌骨筋)
- 舌骨下筋群(甲状舌骨筋、胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨甲状筋)
- 広頸筋
- 胸鎖乳突筋
- 頸長筋
学校ではあまり習わない顎周りの筋肉。特に舌骨上・下筋群と頚椎前面についている筋肉が大切。
ヘッドフォワードポスチャーの人はここの筋肉が固くなり、弱くなりやすいです。
もちろん舌骨には肩甲骨や胸骨についている筋肉があるので全体的なアライメントを修正する必要もあります。(特に胸郭)また顎を使わなくなってきているので顎周りの筋肉も固く弱くなっています。
2頸後方の筋肉
- 頭・頸部半棘筋
- 頭・頸板状筋
- 肩甲挙筋
- 僧帽筋上部
- 後頭下筋群
ポイントはこの細い筋肉の停止と起始部分。頸部だけでなく胸椎を中心としていることがわかる。
つまりヘッドフォワードポスチャーを修正するために後頭下筋群だけ伸ばしてもダメ。
胸椎のアライメントを修正した上で頸部の運動を行うことが大切なのです。つまりヘッドフォワードポスチャーの落とし穴としては頸部だけではなく胸郭を操作すること!
3頸部横から
- 胸鎖乳突筋
- 顎二腹筋
- 斜角筋
- 板状筋
- 肩甲挙筋
これらは3次元に理解しましょう。頸部の側屈や回旋に関わる要素が強いので。
ヘッドフォワードポスチャーになると顎が開き、口呼吸優位になります。そうなるとさらにアウター優位の呼吸になり肩周りがこりやすくなります。
ヘッドフォワードポスチャーの治し方
箇条書きで書きますので、皆様の臨床の応用力で治療方法は考えてみてください。
- 後頭下筋群、胸鎖乳突筋、僧帽筋上部の短縮の改善
- 大胸筋のストレッチ
- 顎、舌周りの筋肉をほぐす
- 頚椎と胸椎と骨盤の協調生を高める
- 生活習慣を整える
これくらいです。大切なのは胸郭と頚椎の連動性を高めることです!
姿勢通りの筋バランスだけでない
上記で示したのはあくまでも代表的な筋バランスです。例えばFlatbackでもハムストリグスが柔らかい場合もあります。
ではなぜ骨盤後傾なのか?という臨床思考につなげることが重要です。
一つの現象に対して多くの仮説を立てておくことが大切。
腸腰筋の求心性収縮が機能しなければ骨盤が後傾になるし腰椎の前弯が作り出せないかもしれない。
また胸椎や頭部の位置関係が問題で骨盤が相対的に後傾になっている可能性もあります。
つまり3つの姿勢分類に分けることで大まかな予測を立てる。
1人1人の姿勢は詳細に評価して筋バランスを評価する。
筋バランスだけではなくアライメントや重心位置なども頭に入れて評価しましょう。
効果が出る運動療法の考え方
もっとも効果的な運動療法は
- 弱化している筋肉を強化
- 短縮している筋肉を伸ばす
- 最大限代償なくできる負荷に合わせる
これが運動療法を最大限効果的にする方法です。姿勢分類から考えてみましょう。
<例>
Flatbackを例に弱化しやすい筋肉→腸腰筋
短縮しやすい筋肉→ハムストリグス
であれば腸腰筋を強化しながらハムストリグスに遠心性収縮をかける運動が効果的。
写真のような運動であれば同時にどちらの効果も引き出せます。
固い筋肉には遠心性収縮と拮抗筋のIa抑制をかけて、弱い筋肉には適度な収縮を促す。
さらに自動運動になるので脳への運動学習も進みます。
骨盤・体幹のニュートラルポジション
ピラティスで重要視されるコアのコントロール。図のような関係性をどの姿勢でも保つこと。
そうすると自然とドローインが行われインナーマッスルが働きます。
すべての運動において意識させることが重要。
四肢の重さに体幹が負けてしまうとストレスが蓄積されていきます。
多くの現代人は体幹筋力が四肢の重さに負けていることが多いのです。
運動療法強度とキューイング
運動療法で大切なのは適切に・適度な強度を与えること。
代償動作のままエクササイズを行っても効果は半減。もちろん強度が低くてもダメ。質も量もトレーニングに影響します。
運動強度の変更には
- 支持基底面
- 課題数
- レバーアーム
を変更すれば何通りものエクササイズが考えられます。
高齢者でも、骨折をした人でも、スポーツ選手でも、子供でもどんな人にも対応させられるのです。
またキューイングも非常に重要。
口頭だけでどれくらい人を思った通りに動かせるかということです。
「足をこっちの方に動かしてください・・」という指示をしている人は患者さんが混乱します。
どう動かしていいか全くわかりません。
「足を時計の針のように伸ばして、天井に向かって持ち上げてください」と言われたほうが明確。
多くの理学療法士さんがこのようなキューイングを意識しないので、運動療法の誘導がうまくいかないことがあります。
動画で動くとこんな感じです!!ピラティス↓↓
まとめ
- 姿勢評価を視診、触診だけで大まかに3つに分類する
- 筋バランスは頭に入れておくが、個々によって詳細な評価がある
- 静的な姿勢だけではなく動的に動かして姿勢を評価する
- 適切な運動強度は「代償動作なく、的確に目的とした部位に負荷を与える」
- 運動強度は支持基底面、課題数、レバーアームを考慮する
- 理学療法士は確実に代償動作を見抜き、分析して運動療法を再考する
動画でもっとピラティスエクササイズと理学療法を結ぶ!
お〜なんかこれは良さそうだ!!
と思っている方はこちらのnoteにめちゃくちゃ動画も載せているので見てください
姿勢を評価するための参考図書
姿勢・運動の観察 ~身体重心の見方とその評価方法~[DVD番号 me80]