歩行分析をしていると誰しもが見えてしまうリハビリ現象・・
ラテラルスラスト・・英語で書くとかっこいいlateral thrust・・・
「あっスラストが出ている・・」
なんて心の中でポケモンを見つけたような感じになっていないだろうか?
ただ名前だけ覚えてもだめ。なぜラテラルスラストが起きるのか?評価は?治療展開は?まで考えられるようにしておこう!!
今回はラテラルスラストについてバイオメカニクス的な視点と評価ポイントをお伝えする。
ラテラルスラストって何でしょ?バイオメカニクスから考えよう
ラテラルスラストは歩行立脚期において起こる側方の動揺のことである。じゃあ細かく見るとこれはどんな現象なのか追求してみよう!!
- 歩行立脚初期における急激な内反角度の増大
- 膝屈曲角度の減少
という状態が起きている
外側にぶれる=膝関節の内反ストレスが加わっているということ
それが立脚の初期に起こるためその後の歩行自体にも影響を与える。基本的には初期に起こるラテラルスラスト
だから立脚初期からの運動連鎖が結果的に膝に悪影響を及ぼす。ということは足関節の動きがとっても重要になる
次に膝関節の屈曲角度が減少することについて。これはクッション作用が少なくなるので膝の負担は自然と増えますよね。ダブルニーアクションの減少でドンっと膝がつくような感じです。
lateral thrust自体が変形性膝関節症の進行と関連性もあるという報告もすでにある。
ラテラルスラストが起きてしまう原因
原因を1つにまとめきれないのが臨床の現象
ラテラルスラストは加齢とともに膝の変形や筋力低下から引き起こされる現象
起きてしまう原因を列挙すると
- 加齢によって膝靭帯の緩みが起こる
- 内側広筋の筋力低下
- 膝の屈伸可動域制限
- 脛骨外旋位拘縮
- 体幹、股関節などの中枢部分の機能不全
などから結果的に膝の側方動揺が起きてしまう
ということは治療や評価は逆算して考えていけば良い
膝OAの歩行の特徴
- 足関節背屈角度が少なく膝関節は屈曲位で接地。踵接地がみられないことも多い。
- 股関節は屈曲・外旋位、骨盤後継で膝関節は内反。股関節は外転位。
- 歩行速度の低下
- 歩幅・ケイデンスの減少
- toe-out歩行
- ストライド時間の延長
- 体幹の遊脚側への傾斜
簡単にまとめると歩行効率がグンと悪くなる
「じゃあなんでラテラルスラストが悪いの??_φ( ̄ー ̄ )」
ラテラルスラストが膝に悪い原因は?
端的に「膝のメカニカルストレス」が大きくなるから
- 膝関節内反不安定性が起こる
- 膝関節内側に圧縮・外側に伸長ストレスがかかる
- クッション作用が低下
これらの条件が複雑に絡み合い、膝が伸びない・曲がらない・痛い・・という3兆候につながっていく
膝関節が安定するためには「しっかり伸びる・しっかり曲がる」ことがポイント
靭帯依存の強い膝関節。でもラテラルスラストが起こるといろんな不具合を起こし始める
「原因やメカニズムはなんとなくわかった・・んでどうすればいいの?」
という人はまだ本質を理解できていないかもしれない。
原因やメカニズムがわかれば自ずと評価も治療も浮かんでくるはず。。。ではどんな評価・治療をするか考えてみよう!
歩行分析以外の膝関節評価を動画で紹介!
あくまで一部を紹介!
個人個人によって考え方やスラストの原因が違うので個別性を考えて評価をしましょ!
膝関節の靭帯不安定性評価(内・外反ストレス)
これは膝関節の整形外科テストをします。
膝の靭帯損傷の人以外にも、靭帯の不安定性があるかどうかは常にチェックします。→膝関節の整形外科テストの方法はこちらの記事からどうぞ
不安定性があればその分負担が加わりやすい。
どの組織が問題かも理解できる。ラテラルスラストでは主に膝関節の内反不安定性が問題になります。靭帯の緩みをチェックするようにしましょ。
脛骨の回旋可動域評価
膝関節は「ねじり」のストレスに弱い。ラテラルスラストを起こすような人には「脛骨外旋位固定」が多い。
つまり脛骨の内旋可動域の低下があるということ。
評価方法は簡単。端座位で膝関節90度屈曲位から脛骨の内旋と外旋の可動域を他動的に評価。通常であれば外側のコンパートメントが動きやすいはず。
さらに詳しく知りたい人→下腿外旋症候群の記事へ
スクリューホームムーブメントの評価
脛骨の回旋可動域と似ているが、屈曲時と伸展時の脛骨の回旋の変化も知っておこう
ラテラルスラストが起こる立脚初期では膝関節伸展位である。そのため腓腹筋やハムストリングスなどの伸張性低下が脛骨の回旋に及ぼす影響は大きい。(もちろん他にも制限する因子はありますよ〜)
→スクリューホームムーブメントの評価をさらに知りたい人はこちら
距骨下関節の評価
ラテラルスラストは歩行立脚初期にほとんどの内反が起こる。つまり踵接地直後の反応を変化させることで膝関節内反ストレスの変化が望める。特に距骨下関節の内反・外反可動域を評価することが大切。
一般的な変形性膝関節症の症例においては足関節が外反し、足部アーチの低下、外反母趾などが見られる。加えて代償的な足関節の背屈運動をしているため、足関節外反がさらに助長される
評価としては腹臥位で距骨下関節の内反・外反可動域を確認し動きにくい方向へにモビライゼーションをかける。その後背屈可動域がしっかりと外反の代償なく引き出せているか評価する。
正しい足部の位置関係で接地できると、踵接地後の膝関節のストレスが変化する
それぞれの評価や治療方法を動画でチェックしたい人は吉田の臨床noteに随時載せております
体幹機能の評価
ラテラルスラストを起こす人は体幹の側方傾斜が歩行中に起きやすくなる。
膝OAの姿勢戦略としては
- 骨盤後傾
- 体幹質量中心後方化
が起きやすい
結果として
- 腹直筋の短縮
- 脊柱起立筋の筋力低下
- ラテラルラインの短縮→側方へのウェイトシフト困難
などが起きて結果的に膝で側方のシフトを作りやすくなってしまう。体幹の評価としてはこのあたりをチェックしよう。やはり膝と体幹の関係性は大切↓
ラテラルスラスト改善のための治療方法は?
治療方法はケースバイケース。でも足関節から順にあげられるだけあげてみた^ – ^
仮想の一般的な膝OAのスラスト対策として考えてくださいね
- 足関節外反接地の修正
- インソールでメカニカルストレスを変える
- 足関節背屈可動域の改善(10度以上、軌道を正常に)
- 踵立方関節の動きの確認(外側アーチの評価)
- 立方骨の挙上・下制の評価
- 腓骨筋、後脛骨筋のクロスサポート刺激入力
- 舟状骨、内側楔状骨のサポート
- 脛骨外旋位固定改善
- 腓骨周囲の軟部組織モビライゼーション
- 大腿筋膜張筋、腸脛靭帯の滑走性改善
- 膝蓋骨のモビライゼーション(特に内側方向)
- 膝関節のサポーター使用
- VM・大内転筋のトレーニング(ピーク反応時間を早める)
- 股関節可動域改善(特に回旋可動域)
- 骨盤の可動域改善
- 体幹の質量中心のコントロール
- 胸椎回旋・側屈可動域の改善
などなど。とりあえずあげてみましたが、評価とリンクさせることが何よりも大切
ラテラルスラストを治すためのリハビリの進め方
- 各関節の可動域を確保する(他動→自動介助→自動)
- 膝関節の屈伸軸を正確に整える
- 足部のヒールコンタクト、ロッカー機能を働かせる
- 体幹機能を正常化させる
- 臥位→座位→立位→歩行と抗重力へ肢位を変換させる
- 歩行の相に分けて学習
といった感じで進めるのがオススメ
もちろんこの考え方は他の関節疾患にも使える(^ ^)
ラテラルスラストのまとめ
- ラテラルスラストのメカニズムを知る
- メカニズムがわかればどこにストレスが加わるかわかる
- 自然と評価もできるようになる
- 治療も評価に合わせて柔軟に考えて実践しよ〜!
- 理学療法以外の手段も念頭に置いて評価治療を進める(装具やサポーター、杖など)
という感じです。臨床で遭遇するラテラルスラストに対応できるようにしておきましょ〜〜!