新人理学療法士の方へ(^_^)今回は膝関節の可動域制限について考えてみましょう。
どの病院に行ってもTKAや変形性膝関節症の人がいます。学生の症例ケースでも最も膝疾患が多いのではないでしょうか
今回はそんな遭遇しやすい疾患・膝関節の可動域制限がテーマ!
「膝関節の可動域制限は大腿四頭筋とハムストリグスです!」
なんて答えは今日から抜け出しましょう!
膝関節可動域制限因子についての簡単動画説明
膝の屈曲可動域と伸展可動域の考え方
生活動作に必須になるのは屈曲可動域
膝関節が90°以上曲がらないと生活上かなり支障がでます。立ち上がり動作や車や自転車の運転、階段昇降など。患者さんの生活に直結する問題なので屈曲可動域はとても大切。
膝関節は構造的に完全伸展してはじめて「安定」する
膝は進展して安定することで機能します。もし5°でも伸展制限は残してはいけない。
歩く度にその小さな伸展制限がストレスとなり疼痛を後々引き起こします。
まとめると
-
- 膝の屈曲可動域=生活に直結
- 膝の伸展可動域=膝の安定性に直結
というわけです(^ ^)
膝屈曲・伸展の主な制限因子について
膝屈曲可動域の制限因子(筋肉)
1大腿四頭筋の伸張性と滑走性
- 大腿直筋
- 中間広筋
- 内側広筋
- 外側広筋
四つのうちのどこの広筋群に問題があるかを確認します。大切なことは3次元で考えること。外側広筋と内側広筋は大腿骨を包むように付着しています。体表上では外側広筋は大腿後面まで位置するのでよく観察しましょう。
臨床上では外側広筋と大臀筋、大腿筋膜張筋、大腿二頭筋との癒着が多いのでしっかりとリリースしてあげましょう。
ちなみに内側広筋斜走繊維には内側膝蓋支帯、外側広筋には外側膝蓋支帯がついてます。収縮させることで膝蓋骨周囲の柔軟性を引き出すことも可能です。
ハムストリングスの収縮
見落としやすいのがハムストリングスの収縮能力。特に短縮域でのハムストリングスの収縮は低下しやすいので注意。90度以上屈曲させるために半腱様筋の収縮が重要。
下腿を内旋位にすることで半腱様筋を働かせることができます。また内側と外側のハムストリングスは癒着しやすいので筋肉間の滑走性を引き出すようにリリースを行い、単独で収縮させてあげましょう。
大腿筋膜張筋の伸張性
外側にある大腿筋膜張筋が固いと膝関節屈曲の軌道が外側にズレていきます。十分な伸張性が屈曲可動域には必要です。オーバーテストで大腿筋膜張筋の固さをチェック。
特に外側広筋と大腿筋膜張筋周囲は軟部組織の滑走性が低下しやすいので治療ポイントになります。
膝屈曲可動域の制限因子(骨)
膝蓋骨の可動性
膝蓋骨に関しては全方向の動きが必要になります。
上下左右、回旋すべての方向に制限なく動くことが重要です。
一般的には外側方向に牽引されていることが多いです。理由は外側広筋の固さと内側広筋の筋力低下が問題になります。→膝蓋骨の基礎的な運動・解剖はこんな感じ
膝蓋骨のモビライゼーションは必須なのでしっかりと行いましょう!
- 膝蓋骨上方向にある制限因子:膝蓋骨上嚢、大腿四頭筋
- 膝蓋骨下方向にある制限因子:膝蓋下脂肪体、膝蓋靭帯、膝蓋支帯
- 回旋方向:内側広筋、外側広筋を介して支帯、膝蓋大腿靭帯、膝蓋脛骨靭帯
大腿骨と脛骨の可動性
いわゆる大腿脛骨関節の部分に可動性があるかどうか。確認の方法としては脛骨を前後と回旋方向に動かして可動性を確認。
joint playを確認しましょう。膝OAに関しては下腿外症候群が多いのでしっかり確認しましょう。
腓骨の可動性
腓骨自体も動きを伴います。どこの動きがというよりも動きがあるかどうかを評価。腓骨には大腿二頭筋や外側側副靭帯、腓骨筋が付着するので色々な方向に牽引されます。
挙上・下制・回旋・前後の動きをよく評価してみましょ。
⇨屈曲時のスクリューホームムーブメントについて知りたい人はこちらから
膝屈曲可動域の制限因子(軟部組織)
-
- 膝蓋下脂肪体の固さ
- 膝蓋上嚢の固さ
どちらも膝蓋骨の上下運動の阻害因子になりやすいので膝蓋骨の上下はよくマッサージしましょう。
特に膝蓋骨下の軟部組織の固さはAKPにつながりやすいです。(膝前面痛)回旋の動きと膝蓋骨の動きの制限が起こるためです。
<膝の伸展可動域の制限因子>
これはあるデータがあるので引用させてもらいます!(今さら聞けない解剖学!町田志樹先生より)
構造物 | 伸展角度 |
浅筋膜の剥離 | 約10度 |
屈筋腱の切断 | 約40度 |
膝関節包後部 | 完全伸展位 |
つまり、膝関節包後部の影響が膝関節の伸展制限に大きな影響を与えているということになります!
膝伸展可動域の制限因子(筋肉)
-
- ハムストリングスの伸張性
- 腓腹筋の伸張性
- 大腿四頭筋の短縮する力(短縮域での筋力発揮)
大まかに分けてこの2つが問題になりやすいですね。
また文献的にも膝の伸展可動域の50%はこれらの筋肉の伸張性低下が影響していると言われています。加えて大腿四頭筋の筋力低下も関係します。
膝伸展可動域の制限因子(骨)
屈曲時と同じです。大腿骨、脛骨、腓骨、膝蓋骨の動きが全体に満遍なく欲しいです。
膝伸展可動域の制限因子(軟部組織)
-
- 後方の関節包・後方の靭帯組織
- 膝蓋下脂肪体、膝蓋上嚢の柔軟性
滑走性の低下も起こりやすく、固くなりやすいので注意。
解剖学的には伸展制限になりやすいのは後方内側の関節包。そこに付着するのは半膜様筋、斜膝窩靭帯。半膜様筋の上には腓腹筋内側頭もあります。この辺りの筋群が制限になりやすいということです!
以上が膝関節の屈曲、伸展時の可動域制限因子になります。
もちろん他にも制限因子は症例によって違うので自分なりに考えて治療と評価をつなげてみてください。
それではまた明日から臨床頑張りましょう!!
ハムストリングスの新しい解剖学的知見
これは驚きですが。。大腿二頭筋は坐骨結節には付着しません。途中の半腱様筋と連結をします。
つまり外側のハムストリングスの機能低下は内側の部分からの影響が非常に大きいということ。
臨床上では内側と外側ハムストリングスの連結部位が癒着しやすいです!
膝関節の伸展ROM評価
膝の伸展可動域に関しては2つの方法で計測しよう!ゴニオメーターの数値だけでは臨床に応用できない。
- HHDで踵の差をみる
- 大腿骨を固定して脛骨の伸展endfeelを評価
膝関節に関わるオススメの本
The膝関節note(吉田がまとめる膝関節の基礎〜臨床の評価・治療)
60分近い動画と1万文字以上で説明しています!もちろん更新もしていきますので色褪せないnoteです!
膝関節疾患のリハビリテーションの科学的基礎 (Sports Physical Therapy Seminar Series)
膝関節疾患に対する理学療法 ~変形性膝関節症を中心とした評価と治療~[DVD番号 me122]
極める変形性膝関節症の理学療法―保存的および術後理学療法の評価とそのアプローチ (臨床思考を踏まえる理学療法プラクティス)