スポーツ外傷のリハビリで有名なACL損傷(前十字靭帯損傷)
スポーツ復帰を目標とする場合多くは手術を行います。
スポーツ復帰までは6~10ヶ月程度。しかし問題はスポーツ復帰の基準がわかりにくいこと。
- 大腿四頭筋の筋力が○○%以上
- ハムストリングスの筋力が○○%以上
- 健側と患側の左右差が○割程度…
などなど。
ACL損傷を引き起こす原因はたくさんあるためすべて「筋力」だけでカバー出来る訳ではありません。
動作や身体の使い方も重要になってきます。また、持久力やアジリティーなどの能力も重要です。
つまり、一つの項目でスポーツ復帰可能かどうかを判断するのが難しい疾患なのです。
今回はいくつものテストを組み合わせたACL損傷後のスポーツ復帰基準・複合的評価を紹介します。
ACL損傷の復帰基準を動画でサクッと理解
ACL損傷大まかなリハビリの目安
まずは大まかなACL損傷後の回復過程をみていきましょう。
- 膝のROMがフルレンジになる
- OKCの膝の曲げ伸ばしが痛みなし
- 歩行で跛行がない
- 早歩きに移行しても跛行がない
- ジョグの開始
- CKCトレーニングで膝に痛みがない
- 徐々にランニング・ダッシュへ
- スクワット・ランジ動作
- ダッシュ・切り替え動作
- ワンレッグでのコントロール
これが大切。
つまり
- 痛みがないこと
- 不安感がないこと
- 可動域制限がないこと
これらは超重要になります。痛みが残っているウチに次の動作に移る確実に膝にストレスを引き起こします。
特にACL損傷後は下腿外旋症候群が多いので評価・治療方法は知っておきましょう。
ACL損傷スポーツ復帰基準<動作編>
少し細かく数値や動作を基準に考えてみましょう。かなり厳しめに書いてありますが、可能であればすべてクリアしていたほうがいいです。ただ選手の復帰時期や試合・大会などの日程もあるので、加味して考えてくださいね!
ランニング開始基準
- HHD ocm(1〜2押し程度の左右差は許容)
- active ROM0-120度
- ラックマンテストで良好なend point
- RF、VL、ham、gastro tightness左右差なし
- BIODEX基準quad:70% hamstrings:80%
- ブリッジ最終伸展で左右差なし
- SEBT(backward、lateral)左右差なし
- hip〜patella〜tibia〜ankleの異常回旋なし
- 片足スクワット・ヒールレイズが安定している
ジャンプ開始基準
- BIODEX quad85% hamstrings:95%
- 自体重以上のスクワット左右差無くパラレルまで可能(負荷は体重の1.5倍以上が理想)
- スプリットスクワットジャンプ左右差なし
- トランポリンジャンプ片脚 左右差なし
- SEBT(forward) knee-inなし
- 不安定面での片脚スクワット 左右差なし
- 体幹回旋でのSEBT 左右差なし
- 片脚立位での体幹傾斜左右差なし
- 正座可能
コンタクト開始基準
- 30cm台から片脚着地 左右差なし
- 片脚hooping 前後・側方 左右差なし(8の字サークル、階段昇降、反復横跳び)
- 不安定面での片脚ジャンプ 左右差なし
- ACL損傷スポーツ復帰基準<機能編>の9割以上の項目が可能かどうか
ACL損傷スポーツ復帰基準<機能編>
- BIODEX(筋力)
- 大腿周径(筋力)1cm未満の左右差が理想
- 50m走(無酸素)
- 300mヤードシャトルランテスト(無酸素)
- 20mシャトルラン(耐乳酸)
- リカバリーテスト(耐乳酸)
- スクワットnRMテスト(最大筋力)
- 5連続両足飛び(連続筋パワー)
- 10cm立ち上がりテスト(持続的筋力)
- 40cmシングルレッグドロップテスト(パワー)
- 40cmシングルレッグデプスジャンプ(パワー)
- 垂直跳び(パワー)
- シングルレッグ垂直跳び(パワー)
- Tテスト(アジリティー)
- Fプランク Sプランク(アジリティー)
- ヘキサゴンテスト(アジリティー)
※方法や平均値などはgoogleで調べてみてください。
かなり項目数がありますがすべて重要な要素です。
実際僕が臨床でACL損傷をみていた時はこれらの項目を全てチェックしていました。
大切なのはこれらの項目が左右差・不安感・痛み無く行えることが大切です。
特にコンタクトが多いスポーツは想像以上の筋力やパワー、スピード、反応が要求されます。
復帰までの最短ルートはいろんな人の協力から
スポーツのリハビリ〜復帰までを全て1人で賄うのは無理だし、効率化が悪い。だから使えるだけ周りのリソースを使おう。
- セラピスト
- 監督
- チームメイト
- 家族
- トレーナー
- マネージャー
たくさんの人がスポーツ選手に関わっている。
だからこそいろんな人の協力を得てスポーツ復帰を最短で目指そう。
スポーツ復帰目指す時に大切なのは「選手」を中心に考えること。
セラピストはトレーナーやチームや監督をリソースとして考えて効率化を考えること。
セラピストが関われる時間はわずか。だからこそ他の環境を整えて協力することが大切。
— 吉田直紀〜理学療法士〜 (@kibou7777) 2017年9月20日
いまだに「セラピスト中心」になっている人が多い。
自分1人で何とかしようは一番効率が悪い。
メディカルはセラピスト、トレーニングはトレーナーで分担させた方が早い。
— 吉田直紀〜理学療法士〜 (@kibou7777) 2017年9月20日
とかエラそうに言っていますが僕も昔は独りよがりでした。知識や技術がヘンについて来るとついついやりがち。
「1人で何とかしようとする」は患者にとって迷惑。
自分のできる領域とできない領域を理解して複数の人とタッグを組める人が一番ありがたい。
— 吉田直紀〜理学療法士〜 (@kibou7777) 2017年9月20日
ACLスポーツ復帰の基準のまとめ
今回はACL損傷後のスポーツ復帰基準の複合的評価を紹介しました。
筋力・有酸素リカバリー能力・パワー・アジリティーなどの機能の回復と、動作分析からアライメント、無意識下での
身体コントロール、競技に合わせた運動特性からACL損傷後のスポーツ復帰可能かどうか判断していきます。
ある一つの要素だけでスポーツ復帰を決めるのは安易すぎます。もっと深く細かく評価することで選手は安心してスポーツ復帰出来るようになります。
1人でも多くの方が安心してスポーツ復帰できますように……
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