整形外科テストは臨床で頻繁に使う評価方法の上肢編です。
永久保存版で自分が見返す時用に作ったのでかなり詳しく書いております!!(適宜修正しながら)
目的と方法だけでなく、臨床におけるワンポイントアドバイスも加えています。→下肢編もあるのでご参考に!
頸部の整形外科テスト
1スパーリングテスト(spurling test)
<目的>
頸部側屈側の椎間関節の異常や椎間孔の狭窄の検査。
<方法>
端坐位から頸部を側屈させ垂直方向へ圧迫する。まず症状のない側から行い、次に症状側へ行う。圧迫中に上肢への放散痛が発生したら陽性。肩や上肢に放散痛がなければ陰性(頸部の痛みも陰性)側屈側と反対側への疼痛は疼痛側の筋スパズムの可能性がある
<注意点>
痛みが強い場合は実施しない。体幹の側屈代償に注意
2ジャクソンテスト(Jackson compression test)
<目的>
頸部側屈側の椎間関節の異常や椎間孔の狭窄の検査。
<方法>
端坐位から頸部の側屈と伸展させて頸部を垂直方向へ圧迫する。側屈側の頸部や上肢に放散痛が出現したら陽性。(椎間関節を狭小化するテスト)注意点はスパーリングテストと同様。
3椎間孔圧迫テスト
<目的>
後部椎間関節の異常や椎間孔の狭窄の検査
<方法>
端坐位から頸部に垂直に圧迫を加えて、頸部を回旋する。局部の痛みが出現したら後部椎間関節の異常、椎間孔の狭窄の存在を示唆。神経根症状が出現したら神経系のテストを行う
<注意点>
頸部を不良姿勢で行うと陰性になりやすい。
4肩押し下げテスト
<目的>
頭部と肩を引き離し、硬膜周辺の癒着、神経根・腕神経ソウの癒着の検査。
<方法>
端坐位で頸部を側屈させ、側屈側と反対の肩甲骨を押し下げる。(頸部右側屈なら左の肩甲骨を押し下げる)伸ばした検査側の上肢に放散痛が出現すれば陽性(硬膜、神経根、腕神経ソウの癒着を示唆)もちろん筋スパズムの可能性もある(僧帽筋上部、肩甲挙筋、板状筋など)
5イートンテスト(Eaton test)
<目的>
神経根の圧迫症状を検査
<方法>
端坐位で頸部を側屈して、検査側の上肢を肩関節伸展・外旋・肘伸展・手関節背屈で伸長させる。上肢に放散痛が出現すれば陽性。
6牽引テスト
<目的>
頭部を上方に牽引し、椎間孔狭窄、筋損傷、関節包損傷を鑑別。
<方法1>
端坐位から相手の下顎骨を把持して、もう一方の手で上方へゆっくり30秒牽引
<方法2>
端坐位から相手の外後頭隆起と側頭骨を挟み頭部全体を上方へゆっくり30秒牽引
牽引中に神経根症状が緩和・消失すれば陽性。元に戻した時に症状が再燃すれば陽性。
7椎骨動脈テスト
<目的>
頸部を回旋し伸展位にして脳底動脈への血流を検査
<方法>
背臥位から頸部を回旋、次に伸展を30秒維持。嘔吐感や頭痛、めまいが出現したら陽性。また眼振を認めても陽性。陽性反応は椎骨動脈の狭窄の存在を示唆。環軸関節の椎骨動脈の伸長と圧迫が行われるため。
1~2頚椎は伸展で、4~5・5~6椎間は回旋で圧迫されるので、「伸展」と「回旋」どちらの要素で陽性になったかも確認する
8肩外転テスト
<目的>
上肢への末梢神経を弛緩させることで神経根の圧迫を検査。(特にC4~5)
<方法>
端坐位で症状のある腕を頭の上にのせる(肩外転、外旋、肘屈曲)この位置で症状(痺れ・痛み)が緩和すれば陽性。特にC4~5、C5~6が疑われる。
9EAST(elevated arm stress test)
<目的>
胸郭出口症候群の検査
<検査>
端座位で肩関節90度外転、外旋、肘関節屈曲90度、前腕中間位にして手のグーパーを3分間実施。3分間の間に神経学的な症状が出現したら陽性。筋力低下にも注意
10アドソンテスト(Adson test)
<目的>
胸郭出口症候群の検査
<検査>
端坐位から患者の橈骨動脈を触る。頸部を伸展させ検査側へ回旋させる。深吸気させ椎骨動脈の拍動を確認。動脈の拍動が減弱した場合を陽性とする。第1肋骨と前・中斜角筋の狭窄。
11ライトテスト(Wright test)
<目的>
胸郭出口症候群の検査(小胸筋や鎖骨下筋、肋鎖靭帯による腋窩動脈の圧迫を見ている)
<検査>
端坐位から患者の橈骨動脈を触る。肩関節を外転させた時に拍動の減弱があれば陽性。(肩関節を外転すると小胸筋と鎖骨下筋が緊張して腋窩動脈を圧迫する)
別法としては両方の拍動を肩関節90度屈曲、外旋位で確認し、頸部を回旋させる方法もある
12エデンテスト(Eden test)
<目的>
胸郭出口症候群の検査(肋鎖間隙が圧迫されることによる鎖骨下動脈と腕神経ソウの圧迫の検査)
<検査>
端坐位から橈骨動脈を触り、患者に胸を張らせる。(気をつけ姿勢)肩関節を伸展位にして肩を下方に下げる。動脈の拍動を評価
13Morley test
<目的>
腕神経の圧迫
<検査>
斜角筋三角(前斜角筋と中斜角筋の間で形成される場所)に手をあて圧迫する。痺れや放散痛が出たら陽性
14Soto-Hall test
<目的>
頸部を屈曲させ、上部胸椎後部を伸長させることで脊椎疾患や靭帯損傷の有無を検査
<検査>
背臥位から患者の頭部を支え、胸郭を固定して頸部をゆっくり屈曲させる。胸椎部の局所疼痛が出現したら陽性。陽性反応は椎間関節の捻挫、骨折、脱臼、ヘルニア、髄膜炎などが示唆される。もしも膝や股関節が屈曲するときは髄膜炎の可能性があるので、下肢にも注意して評価する。
頚部のスペシャルテストの注意点
・頚部自体が繊細な関節なので注意してストレスをかけるようにする
・体幹の側屈による代償が多い
・中枢部の問題か抹消の問題かも合わせて考えて評価する
→頚椎の機能解剖やメカニズムについてはこちら
肩関節の整形外科テスト
1棘上筋テスト(full can test/empty can test)
<目的>
棘上筋を収縮させて棘上筋の損傷の有無を確認
<検査>
座位または立位。水平屈曲30度、肩関節外転30度(90度で行うと偽陽性が起きやすい)
full can test:肩関節外旋位にて抵抗(棘上筋の後方部分にストレス)
empty can test:肩関節内旋位位にて抵抗(棘上筋の前方部分にストレス)
<注意点>
損傷だけでなく、筋力評価も同時にできる。ポイントは肩甲骨の代償が起きるどうかも重要なポイント・また臨床上empty can testは上腕骨内戦によるインピンジメントでも陽性になるため注意。
2painful arc test
<目的>
腱板損傷や肩峰下インピンジメント症候群の有無
<検査>
座位または立位。患者に肩関節外転運動を実施してもらう。肩関節外転60〜120度で頭痛が出現し、それ以外の可動域で疼痛が消失する場合を陽性。この範囲をpainful arc(有痛弧)と呼ぶ。60〜120度の間で、上腕骨大結節、腱板、肩峰下滑液包などが鳥口上腕靭帯、肩峰、烏口突起と摩擦を起こすためである。
外転120度を越えると大結節が肩峰下へ入り込むため痛みが消失するというメカニズムがある。陽性の場合は腱板炎、腱板断裂、石灰沈着性腱板炎、肩峰下滑液包炎が疑われる。(自動運動がこんなんで、他動で陽性が認められた場合は腱板断裂を疑う)代償として体幹を側屈するshrug signがあるので注意。
3drop arm test
<目的>
腱板断裂の有無
<検査>
座位または立位。検者が肩関節外転100度まで患者の上肢を把持して、ゆっくり離し、上肢をゆっくり下ろすように指示。体幹側屈の代償を抑えるために肩甲骨を固定。肩関節90度あたりから急激に落下した場合を陽性とする。
<注意点>
急激に落下した際に対応できるように検者は準備をしておく。
4Apley`s scratch test
<目的>
簡単な肩関節の可動性の評価と、棘上筋の短縮性疼痛及び伸張性疼痛を評価する。陽性の場合は棘上筋の炎症が疑われる
<検査>
座位または立位。患者に肩関節外転・外旋と肘関節屈曲を行わせ、指先で反対側の肩甲骨上角を触れるように指示。(棘上筋短縮のストレス)次に同側の肩関節伸展・内旋と肘関節屈曲を行わせ、指先で反対側の肩甲骨下角に触れるように指示。(棘上筋伸張のストレス)どちらかの方法で頭痛が生じれば陽性。
5棘上筋衝突テスト
<目的>
棘上筋の損傷や炎症の評価
<検査>
座位または立位。肩関節90度屈曲位から肘関節を90度屈曲し肩関節を最大内旋させる。これで痛みが出ない場合は肩関節を水平屈曲させる。次に肩関節90度外転位でも同様に行う。どちらかの検査で肩峰下部に疼痛が生じれば陽性。
このテストは肩関節屈曲・内旋or肩関節屈曲・外旋で肩峰下スペース(烏口肩峰アーチ)に上腕骨大結節を衝突させて肩峰下スペースの状態を評価することになる。
※NeerやHawkinsと合わせて行うと判定感度が高くなる。
6lift off test
<目的>
肩甲下筋の損傷・断裂・筋力低下の有無。
<検査>
座位または立位。肩関節伸展・内旋・肘関節を90度屈曲させて腰部の位置に誘導。その位置から手を後方に持ち上げる。(肩関節内旋が重要)手が腰から離れなければ陽性、また離れても健側と明らかな筋力差がある場合も臨床上多い。拘縮があってこの肢位を取れない場合はbelly press test を実施する。
Belly press test→患者自身の腹部に患側の手を置いて腹部を圧迫するように押して動作を行わせる。押すことが不可能な場合、疼痛が出現した場合を陽性とする。
7Neer`s impingement test
<目的>
肩峰と腱板の衝突を意図的に行い、腱板や上腕二頭筋長頭腱の損傷や断裂の有無を検査。大結節と肩峰前縁に問題がある。
<検査>
座位または立位。患者の肩甲骨を一方の手で固定し、もう一方の手で患者の肩関節を内旋させScapular plane上に屈曲させていく。ポイントは大結節を肩峰下に押し付けるようにすること。疼痛が出現したら陽性。
判断が難しい場合は検査最終域でさらに屈曲と内転を強める。もし外旋位で挙上して疼痛が出現すれば肩峰下滑液包の閉塞の存在の示唆にもなる。(詳しくはzero position testを勉強しよう)
8Hawkin`s test
<目的>
腱板と烏口肩峰靭帯の衝突現象を他動的に誘発し腱板損傷や滑液包炎の有無を検査。大結節と烏口肩峰靭帯に原因がある。
<検査>
座位または立位。Scapular plane上で他動的に肩関節90度屈曲位、肘関節90度屈曲位を保持。前腕を下方へ誘導し肩関節の内旋を強制。大結節を烏口肩峰靭帯に押し付けるようにする。疼痛が出現したら陽性。
陽性は棘上筋の病変、肩峰下滑液包炎を示唆。(体幹側屈の代償に注意)屈曲を強めると衝突も強くなる。
このHawkin`s testからさらに肩関節の水平屈曲を強めると臼蓋内に小結節が侵入し、肩甲下筋腱及び肩甲下滑液包を挟み込み疼痛が誘発される。
肩関節前方のインピンジメントは肩峰下の上腕骨頭と烏口突起との組織が上腕骨前方部分に圧迫された結果。大結節は肩峰の前方1/3で挟まれ、棘上筋、上腕二頭筋長頭腱、烏口滑液包から構成されている。
9load and shift test
<目的>
上腕骨頭を前後方の不安定性の検査
<検査>
座位か背臥位。肩甲骨を固定して上腕骨を前後に動かす。上腕骨頭の偏位量が大きければ陽性。
10Sulcus sign
<目的>
上腕骨頭の下方への不安定性の検査
<検査>
座位か背臥位。肩甲骨を固定して上腕骨を下方に動かす。下方への過剰な可動性や不安定性を陽性とする。肩甲骨を固定している指先で肩峰下の間隙を触知しておく。
肩関節外旋位で実施すれば通常のsulcus signで陥凹の部位は肩峰下になる。内旋位で実施するとdimple signと呼ばれ三角筋前部繊維に陥凹が認められる。
11anterior apprehension test
<目的>
上腕骨頭を他動的に前方へ移動させGH jtの前方不安定性の有無を検査
<検査>
座位・立位。他動的に肩関節外転90度、肘関節90度屈曲位のポジション。患者の上腕骨頭後方からゆっくりと押し出す・不安定感や脱臼感が認められた場合は陽性。陽性の場合はSLAP損傷、棘下筋不全断裂、下関節上腕靭帯損傷、腱板疎部損傷が示唆される。
このテストは不安定性を誘発するため十分に加重・痛み・不安感に注意して行う。
12posterior apprehension test
<目的>
上腕骨頭を他動的に後方へ移動させGH jtの後方不安定性の有無を検査
<検査>
座位・背臥位。肩関節90度屈曲、内旋、肘関節90度屈曲位。肘頭から背側方向に圧をかける。(肩甲骨が内転しないようにする)不安定感や疼痛が出現すれば陽性。
13crank test
<目的>
関節唇損傷のテスト(BankartやSLAP損傷)
<検査>
座位・背臥位。肩関節160度以上を挙上させて肘関節90度屈曲位。肩甲骨を固定して関節窩に向けて上腕骨頭に上腕骨長軸上の加重を加え、上腕骨の内・外旋を行う。その時に疼痛やクリック音が出るかどうかを確認する。160度以上屈曲させることによって大結節が関節窩上部に位置して関節唇と接触するため。
14O`brien test
<目的>
関節唇損傷のテスト(SLAP損傷や上方関節唇損傷の有無)
<検査>
座位・立位。肩関節90度屈曲位・軽度水平屈曲、肩関節内旋・肘関節伸展位。一方の手で肩甲骨を固定してもう一方の手で上腕に加重をする。内旋で疼痛やクリック音があり、外旋で消失すれば陽性。このObrien testは肩鎖関節にもストレスを加えるテストにもなる。
※関節唇損傷について
前下方の関節唇損傷→Bankart損傷(時計の3〜7時の間での関節唇損傷。SGHLの安定性が低下する)
上方の関節唇損傷→SLAP損傷(時計の10〜2時の間での関節唇損傷。Bicepsが剥離するとIGHLの安定性低下)
インピンジメントのテストと複合して捉えることが大事。
15Speed test
<目的>
上腕二頭筋長頭腱の不安定性や炎症の有無を検査
<検査>
座位・立位。肩関節90度屈曲位、前腕回外位にて実施。肩甲骨を固定して前腕遠位部に抵抗をかける。疼痛が出現すれば陽性。(結節間溝部を触診しながら実施する)回内では消失する。
16Yargason`s test
<目的>
上腕二頭筋長頭腱の不安定性や炎症の有無を検査
<検査>
座位・立位。肘関節90度屈曲位、前腕回内位。患者が前腕回外させるように指示して、検者は抵抗する。結節間溝部に疼痛が生じれば陽性。
※上腕二頭筋長頭腱のある結節間溝部は炎症が起こりやすい
肩関節のスペシャルテストの注意点とアドバイス
・肩関節は痛みを伴いやすく、不安定性が誘発されやすい関節なので気をつけて行う
・拘縮によりポジションが取れない場合はテストは行わない
・肩甲骨の代償、体幹の代償も合わせて評価すると臨床に応用しやすい
肘関節の整形外科テスト
1内反・外反ストレステスト
<目的>
内反ストレステストは外側側副靭帯、外反ストレステストは内側側副靭帯に対して行う
<検査>
座位・立位で実施。肩関節屈曲・前腕回外位から開始。肘関節は屈曲位と伸展位の2パターンで行う。肘を固定して外側と内側の靭帯を触診したまま各ストレスをかけて痛みや不安定性を確認する。
動揺に関しては個人差があるため左右差を必ず確認する。
2上腕骨外側上顆炎テスト
<目的>
手関節の伸筋群にストレスを加えて上腕骨外側上顆炎の有無を検査
<検査>
Thomsen test→肘関節伸展位から手関節伸展を自動で行い抵抗をかける
Chair test→肘関節伸展位から椅子を持ちあげさせる
中指伸展テスト→前腕回内から中指の伸展を自動で行い抵抗をかける
いづれも外側上顆の疼痛の有無を評価する。手関節伸展時には橈骨神経や後骨間神経にストレスを加えるため、筋力低下や疼痛の訴えが伴うことがある。(上腕骨外側上顆をしっかりと触診して鑑別する必要がある)
3上腕骨内側上顆炎テスト
<目的>
手関節の屈筋群にストレスを加え、上腕骨内側上顆炎の有無を検査
<検査>
座位・立位で実施。肘関節90度屈曲位の状態から前腕回外・手関伸展のまま、ゆっくり肘関節を伸展させる。上腕骨内側上顆に疼痛が出現すれば陽性。ストレスをさらに強める場合は手関節の伸展を強めて、患者に手関節屈曲方向に力を入れてもらう。
肘関節屈筋群の短縮痛と鑑別することが大切。(患部の触診)
4肘関節屈曲テスト
<目的>
尺骨神経支配領域のしびれや異常感覚の有無を検査すること
<検査>
座位・立位で実施。前腕回外にて肘関節最大屈曲位を保持。30秒〜5分間尺骨領域の感覚の変化を観察する。(文献によって様々だが1分以上保持する方が妥当)前腕から尺骨神経領域にしびれや異常感覚が認められたならば陽性。(肘部管症候群の存在を示唆)
他にも肘関節最大屈曲+手関節伸展や肘関節最大屈曲+肩関節90度外転+手関節最大伸展などの方法もある
肘関節のスペシャルテストの注意点とアドバイス
・肘関節のスペシャルテストの際に肩関節の動きで代償されないように注意する
・肘関節周囲の軟部組織の短縮痛による偽陽性に注意する